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日本語の文構造

本文開始


【日本語の文構造】

改めて、日本語文法に関する基本事項についてまとめてみます。
今回は文の構造について。

「規範文法」と「記述文法」

まず、文法論について少し触れておきましょう。
文法とは、言語を構成する単位要素の機能、その規則性等を分析したもの。
文法を考える際には、「規範文法」と「記述文法」を区別する必要があります。

「規範文法」とは、言語政策や言語教育の基準とすることを目的に、その言語の規範を示したものです。
いわば実用的目的から、文法的に正しい・正しくないということを判断するための基準であり、学校文法も一種の規範文法と言えます。
対して「記述文法」とは、自然な言語が持つ法則性を調べて説明するものであり、言語学の一領域において研究が進められています。
現代の文法論は専ら記述的。誤った言葉遣いに関しても、それを批判するのではなく、なぜそのような変化が生じたかを分析し、法則性を見出すことを目指して研究するのが記述的な文法論ということになります。

日本の文法論

日本語の現代文法論の中核をなすのは、山田文法、松下文法、橋本文法、時枝文法の4つであり、四大文法と呼ばれています。
山田文法は山田孝雄、松下文法は松下大三郎、橋本文法は橋本進吉、時枝文法は時枝誠記による文法論であり、それぞれに独自の理論を展開しています。
現在ある文法論の多くは、これらのいずれかの流れを踏襲したものと言って良いでしょう。
その中でも橋本文法は、学校文法の基となっており、一般的に最も浸透した文法論と言えます。
その結果、日本語の文法と言えば橋本文法をイメージする人は多いのではないかと思います。
橋本文法は、文の構成要素として「文節」を重視した文法体系を展開している点で特徴的。
ただ、文節による文構造の分析は、音を基にした形式的な分類方法であり、日本語の一側面として理解しやすいものの、文章の構造の解析方法としては難があります。
したがって、今も昔も橋本文法に対する批判は絶えず、方針を異にする言語学者は少なくありません。
ここで目的とするのは、あくまでも情報保障の基礎知識として日本語の文法を考えることですので、本質的な文法論に踏み込むつもりはありません。
目下主流となっている諸文法論を適宜考慮しつつ、これからの話を進めていきます。

日本語文の基本構造

日本語文の基本的な構造は「補語-述語構造」で説明できます。
大雑把に言うと、述語とは何かを“述”べる語。
日本語の文は述語が中心であり、それを “補”う役割を担う語が補語となります。
この補語と述語の基本的な構造に、修飾語や他の補語が加わって文が成り立っているとするのが「補語―述語構造」の考え方です。
日本語では述語は文の最後にくるため、基本の文構造を模式化すると、
 [ 補語(+補語)+ 述語 ]
という形になります。
述語に使われるのは、多くは動詞ですが、形容詞や「名詞+だ」も述語になることができます。
それぞれの場合を、動詞文、形容詞文、名詞文と称します。

なお、文の基本構造は「主語―述語構造」として説明されることもありります。
ここで主語とは、「が」(「は」)によって表され、動作や作用の主体を表すものと説明されます。
英語の基本文型「主語―動詞」に対比させての文構造モデルとなっていますが、日本語において主語のない文は多く、それらを説明するのに適したモデルとは言いがたいところです。
ここで主語を、補語あるいは広い意味での連用修飾語として解釈すれば、この「主語―述語構造」も先の「補語―述語構造」に含まれるものとして説明できます。
ちなみに、主語に対する議論はかねてから盛んに行われています。
西洋の文法理論の影響もあって、一時は日本語文においても主語・述語は必須とされていましたが、現在では、「主語」を重視しない文法論がほとんどです。
ただし学校文法では、今でも主語・述語を基本とした文法用語を用いた指導が行われています。
(参考:三上章『主語廃止論』)

主題文・無題文

「補語-述語構造」は文の成分に着目しての構造分析でしたが、それとは別に、全体の文脈においてのその文の役割に注目した構造分析の考え方があります。
ここに「主題」という概念が出てきます。
主題とは、“これから何について述べるか”を明示すものであり、「題目」とも言われるものです。
例を挙げます。
 ・この本は自分で買いました。
 ・お風呂は、おばあちゃんが先に入った。
上の文で、“この本は”、“お風呂は”の部分が主題。
主題は、「名詞+は」の形で表されます。
日本語において、この形をとる文は多いですね。
主語と形が似ているため混同されがちですが、そもそも概念の違うものです。
主題のある文を主題文、対して主題のない文を無題文と分類します。
この考え方によって、日本語の文の基本構造は、「主題文」と「無題文」の2つの体系に大別することができます。

必須補語と副次補語

上で、補語とは述語を補う役割を担う語であるとしました。
「名詞+助詞」の形をとるのが普通です。
補語は、その述語に対しての関係性から、必須補語と副次補語に大別されます。
必須補語とは、その述語にとって欠かせない補語。
その補語を欠くと文として意味が通らなくなってしまう補語のことです。
対して副次補語とは、確かに述語を補う役割はあるものの、それを抜いても文の構造としては問題ないという補語のこと。
必要な必須補語の内容や数は、それぞれの述語によって決まってきます。
たとえば、
・きのうサザエさんは、どら焼をたくさん食べた。
という文章では、“サザエさんは”と“どら焼を”の2つが必須補語となり、
・マスオさんは、カツオに算数を一生懸命教えた。
の場合では、“マスオさんは”“カツオに”“算数を”の3つが必須補語となります。
“マスオさんはカツオに教えた”でも“マスオさんは算数を教えた”でも、文として不充分なのです。

修飾語

文の基本構造は[補語+述語]と述べましたが、文構造を考えるにあたって、もうひとつ大事な要素が修飾語です。
修飾語とは、他の語句が表す内容に対して、詳しい説明や限定の意味を加える語句のことであり、具体的には形容詞や副詞、それに準ずる要素のことを指します。
体言を修飾するものを連体修飾語、体言以外の品詞にかかるものを連用修飾語と言い、修飾される側の語を被修飾語と言います。
日本語文では、修飾語は常に被修飾語の前に位置するという特徴があります。

※ ここでは「語」を基準に説明してきましたが、句や節にも同じ考え方が適用されます。
※ 文中に使用している用語は、必ずしも一般に広く浸透しているものとは限りません。あくまでも判りやすい分類・解説を目指すべく、説明に適していると思われる用語を適宜採用しています。


Last Update 2010-06-03 (木) 12:47:03

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