盲ろう者とは目と耳両方に障害のある人のことをいいます。
富山盲ろう者友の会では、盲ろう者とその支援者の交流・支援活動を行っています。

録音技術

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【録音技術】

ここまで、「調査」「処理」の作業について大雑把に触れました。
具体例を示さなかったのでイメージしにくかったと思いますが、詳細はまた改めて紹介することにして、先に進みます。
ここからは録音作業の話です。

録音技術のポイント

読み方の確認(調査・処理)の次は、実際に声を録音します。
正しくはっきりと‥といった‘読む技術’が重要なのは当然ですが、それ以外にも機材の操作を含めた録音の技術・知識が必要です。
録音技術のポイントは主に2点です。
①正しい形式で録音する
②良い音で録音する
録音する媒体としては従来よりカセットテープが用いられてきました。現在は、録音図書のデジタル化が進み、パソコンもしくは特定の機器を用いたデジタルの録音に移行していますが、基本的な考え方は共通です。
デジタル録音については別項で改めて紹介するとして、ここでは従来型のカセットテープの録音を前提に話を進めます。

正しい形式で録音する

音訳図書は全国的に、ある程度統一された形式で製作されています。
利用者の利便のため、2001年に録音図書製作基準(全国視覚障害者情報提供施設協会)が施行され、録音項目・順序等はそれに準拠しています。
テープ第1巻のはじめ、A面のおわり、B面のはじめ、テープ第2巻以降のはじめ、おわり、テープ最終巻のおわり等、それぞれに定められた内容を定められた順序で挿入します。冒頭、巻末の余白のあけ方も規定されています。
その他の規定もありますが、一定の形式に揃えるというだけのことですので、技術的に難しいことはありません。

良い音で録音する

‘良い音’には、少なくとも‘一定の音量’‘明瞭’‘雑音がない’という要件が求められます。
これは難しいところです。
いろいろな要素が絡んできます。
といっても大部分は読み手の力量の問題とも言えるのですが、読み手の技術不足はひとまず置いておいて、一般的に良い音で録音するのに必要な環境条件について記します。

読み手以外の因子

録音に関係する読み手以外の因子としては以下のようなものがあります。
①録音室
②録音機
③マイク
④テープ
録音は、ある程度静かで広すぎない部屋であれば、特別な防音設備がない場所でも可能です。
自宅で録音作業を行っている音訳者も少なくありません。ただし住居環境・家庭環境によっては難しい場合も多く、専用の録音室で録音するというのは一つ安定した方法です。
福祉関係の施設の多くには録音室が設けられており、広く利用できるようになっています。
昔は押入れの中で毛布をかぶって録音したという話もありますので、録音室は工夫次第で何とかなるものと言えるかもしれません。
問題は録音機です。
音訳に使う録音機には、マイクの差込口があり、録音レベルが手動で調整できるものが適しています。
マイクの差込口はともかく、録音レベル手動の機種は限られています。
諸々の条件を鑑み録音室に備えられているデッキは、個人で購入するには少々高めです。
見合ったマイクも必要となりますが、これもまたいい値段。
多くの音訳者は、録音室のある施設に出向いて録音を行っています。
(個人で購入して活動している方もいます。また若干の予備もあり、長い作業時間を要する書籍の音訳をする場合には貸出を受けることも時に可能です。先程‘自宅で録音作業をする音訳者も…‘と紹介したのは、いずれのケースにせよ、録音機が自宅にある場合ということになります。
なお、安定した録音をするためには、一連の録音を同じ場所で行うべきだとされています。あとから部分修正する場合でも、録音で使用したのと同じ録音室(自宅ならば同じ部屋)で行うのが基本となります。)

録音室が共用物であるということから生じる難しさもあります。
いろいろな人が同じ機材を使うため、マイクの位置、高さ、角度、椅子の高さなどを毎回調整しなくてはなりません。1日で仕上がるものであれば問題はないのですが、ある程度長いものを読む場合に、毎回の録音環境を同一に揃えることは結構難しいように思います。(慣れの問題かもしれませんが)
(余談ですが、公共施設の録音室は一応防音構造になっているはずなのですが、多くはかなりの不完全防音です。外の音が入ってしまって録音をやりなおすことも少なくありません。天敵はビンの資源回収と選挙カーでしょうか…。)

読み手に関わる因子

録音環境を整えられたところで、やはり読み手由来の因子が録音の出来に大きく関わってきます。
読みの技術自体は急には如何ともしがたいところですが、それ以外の部分は工夫次第で完成度を上げられますので、配慮が求められます。
主には声の入りとノイズの問題です。仮に安定した音量で読んでいても、安定した音量で録音されるかどうかは別問題です。機材類を一定に調整しても、読み手の姿勢が変わればマイクと口の位置関係が変わってしまう。原本の文字を目で追う時に顔が動くと、声の入り方がまた変わってしまう。
上手な録音のためには、自分の“型”のようなものを体得する必要があるのかもしれません。
また、ページをめくる音、身体を動かした音、呼吸の音、口の中の音…。録音にノイズとの闘いは避けられませんが、読み手自身も大きなノイズ源です。
声量が小さくマイク近めで録音するほど、相対量の問題としてこれらの影響がでやすくなるでしょう。

録音時間

1冊の本を録音したら、どのくらいの長さになるでしょうか。
当然、原本のボリュームによって録音時間は大きく違いますが、小説の単行本1冊の場合で、90分テープ5,6本(8~9時間くらい)というのが目安です。
録音所要時間は少なくとも作成テープの長さの2倍程度。
2倍というのは、かなりの技術力を持った音訳者の場合だと思います。
所要時間は個人の力量等に大きく影響されますが、もっともっとかかる場合の方が多いでしょう。
いずれにせよ、仮にノンストップで読んでも相当時間のかかる作業ですから、作業に無駄な時間を使わないことは大切です。録音は音訳作業の中で最も時間を要する部分ですので、各自のレベルなりに効率よく作業を進めることが求められます。


Last Update 2010-06-03 (木) 12:40:11

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