盲ろう者とは目と耳両方に障害のある人のことをいいます。
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音訳と著作権法

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【音訳と著作権法】

著作権法の問題

(※著作権法は2010年1月1日 一部改正されました。以下の記述は改定前のものです。)

音訳活動の根拠法は著作権法(S.46施行)です。
著作権法第37条に「点字による複製等」という規定があり、その3項に「点字図書館その他の視覚障害者の福祉の増進を目的とする施設で政令で定めるものにおいては、専ら視覚障害者向けの貸出しの用に供するために、公表された著作物を録音することができる。」と定められています。
この文言は音訳活動を認可しているように見えて、実は多くの制約を設けています。
まず、音訳作業を行っていいのは“政令で定める施設”に限られること。基本的に著作権許諾が必要ないのは点字図書館などに限られ、その他の音訳ボランティアグループ、公共図書館、個人などが音訳図書を製作するためには、個々著作権者に許諾をとらなければなりません。(個人依頼は別)
この手続が、ただでさえ時間のかかる音訳図書製作を更に遅延させています。
そして“著作物”という区分も色々で、外国の翻訳物と国内の出版物とでは扱いが異なります。
また、少し違う要素になりますが、“視覚障害者向けの”という規定のため、録音図書を他目的に活用することが法的にできないのも問題になっています。読書障害は視覚障害者に限ったものではなく、肢体不自由者、失読症患者等への教育支援として、音訳図書を活用することが求められていますが、先の著作権法の文言がある限り、視覚障害者以外の利用はできません。

同条第1項は「公表された著作物は、点字により複製することができる。」とあり、点訳は自由にできると規定しています。対して音訳の制約が大きいのは、営利目的の朗読商品との区別が難しく、また点訳書と違って誰でも利用しうるというところに理由があるようです。実際、視覚障害者以外の人も利用する可能性が高いとの理由で、権利者側は安易な録音許可施設拡大に反対しています。
点訳に関しても、パソコン点訳に先の文言をそのまま適用することには異論が出ています。一旦パソコンの中にデータが複製されてしまうことが問題のようです。
また、音訳・点訳が許可される場合でも、そのデータの送信については規定がありませんので、別に許諾が必要となります。これらの制約は、著作権保護の為に必要な制約というよりは、時代の進化に法規がついてきていないところに問題があると言えそうです。ただし、著作権改正要求は20年以上前からなされていることを考えると、単なる遅れとは言えない要素もありそうです。
これらの著作権による読書障害を改善するべく、民間発案による「EYEマーク」や、文化庁がすすめる「自由利用マーク」が提唱されています。これは著作者が自らの意志をあらかじめ表明することによって、利用に関わる許諾手続きの労を軽減させようとするものです。

アクセス努力

全国約30万人の視覚障害者のうち、点字使用者は約1割。9割以上は、音訳図書や拡大図書を使用しています。どちらも、なんとか読みたい本にアクセスしようと努力しています。
パソコンを利用する視覚障害者は、昨今のOA機器の発達を利用して、「自分でスキャン→OCRによるテキスト変換→音声化ソフトもしくは点訳ソフトにかける」とった手順で、何とか読みたい本を読もうとしています。しかし、ちょっとやってみればわかりますが、これは相当手間がかかり、誤読も多く、かなりストレスのかかる作業です。しかし結局のところ、読みたいものを読もうと思えば、そうするしかないというのが現状だということです。
情報機器も年々発達し、以前に比べれば情報アクセスの手段は格段に増えたとはいえ、やはり限界があります。「自分で出版社に電話をして、テキストデータの提供を交渉する」という働きかけをする場合もあるようですが、なかなか出版社が応じてくれないケースが多いようです。
最近はどんな出版物も電子データが元にあるはずなので、それを利用できれば、曲がりなりにも読書保障は満たせるはずなのです。点訳・音訳図書を作るにしても、格段の速さで提供することができるのですが、そこまで行くのは相当先になるでしょう。

音訳・点訳・字幕製作などの情報保障活動には常に著作権の問題が絡んできます。
著作権保護は大事ですが、情報保障と両立しないものとは思いません。
著作権法第37条を、是非一度じっくり読んでみてください。

今回で音訳については一旦終了です。
DAISY録音を中心とした近年の音訳の状況については、情報収集が出来次第、改めて記載する予定です。


Last Update 2010-06-03 (木) 12:41:18

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