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要約筆記実践13 「カゴ盛」の処理

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要約筆記実践13 「カゴ盛」の処理

誰かに指摘されたら補足しようかなと思っていたんですが…。
先日来の例文に対する補足です。

列挙された並列情報の処理に関して、「お見舞いに、りんご、みかん、キウイ、バナナ、オレンジ、グレープフルーツのカゴ盛を貰った。」という文章を提示しました。
そして、これを集約法で筆記する際の例として出したのが、以下の3つ。
1.「お見舞いに果物を貰った」
2.「お見舞いにフルーツを貰った」
3.「お見舞いにカゴ盛を貰った」

1と2は、ほぼ同義です。
問題は3。
カゴ盛と書いて果物を意味するかどうか。
果物の要素がこれで出せないとなれば、3は集約法としては不可ということになります。

端的に言えば、「カゴ盛」だけでは果物の要素を表しているとは言えません。
カゴに盛るタイプの品は、他にもある。
よって、「カゴ盛では中身は特定できないから、どのみちフルーツという要素を加えなければいけないとすれば、カゴ盛という言葉を外して果物という語を生かすべき」と考えるのも一理です。
しかしながら今回の場合、「見舞い」という言葉が効いています。
カゴ盛単独では微妙でも、見舞い+カゴ盛となると話は別。
見舞い、カゴ盛とくれば、中身は果物と言って良いのではないかと思います。
ということで、最終的に、3.「お見舞いにカゴ盛を貰った」は可。

とは言え、これだけ微妙なカゴ盛を生かすのが良いかどうか。
結論から言えば、それもYes。
カゴ盛という言葉は、複数のものを取り合わせるという意味合いを含んでいます。
なんといっても、カゴ盛と聞いて浮かぶ画が捨てがたい。
仮に混合型で書くならば、カゴ盛という言葉があってこそ具体例が効いてくるとも言えます。
よって、カゴ盛と果物名を入れたなら、「果物(フルーツ)」という語は不要。

ここまで、要素についてのみ注目して話を進めてきました。
実際の筆記選択を考える場合には、筆記速度等の検討も必要です。
それも併せて考えると、1.「お見舞いに果物を貰った」は不可。
「果物」と「フルーツ」の筆記時間の差は約2秒。
2秒も余分にかけて、フルーツの代わりに果物と書くメリットは無いと言えます。

ちなみに、カゴ盛という言葉。
敢えて「カゴ盛」と出したんですが、言葉としては「盛りカゴ」のほうが、たぶん一般的。
この程度のものなら、そのまま押してもいいし、書き換えても構いません。
ただ、一般的なものに変換するほうが良いということではありません。
話者の言った言葉を変える際には、それなりに理由が必要。

そして、カゴ盛だろうと盛りカゴだろうと、「盛」の漢字は避けたい。
時間に余裕がある場合を除いて、平仮名使用になると思います。
平仮名使用で「盛りカゴ」の場合、単語の頭が「も」なので、前にくる助詞との接合には注意が必要です。

という感じです。
幾多の要素のバランスの中に成り立っている要約筆記の処理判断。
一つ一つの切り口で見ていこうとすれば、要約筆記的には穴のある例文も使わざるを得ないのが難しいところ。
なお、先日からクドクド言っている判断の基準、後から理屈付けしているようにも見えますが、現場で書く際に実際に思考に上げている要素ばっかりです。
10秒ぐらいの時間の間にそれだけ考えているってのも不思議な気がしますが、でも考えているんですよね。
イチイチ言葉で考えているわけではないですが。
後で振り返って、その時々で思ったことを言葉にしたら、こうなるっていう感じ。
一瞬で聞いて書いているようで、結構考えているもんです。


Last Update 2010-06-03 (木) 14:05:02

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