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要約筆記技術6 ベストな要約筆記とは

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要約筆記技術6 ベストな要約筆記とは

要約筆記の作業は状況判断の連続です。
その時その時の状況に応じて、どう対応し、どう処理するか。
要約筆記的にベストな選択というのは、その場での聴覚情報とのフィット性で決まってきます。
話の内容によって決まるわけではありません。
仮に全く同じ原稿を読み上げた場合でも、その読み方次第で、要約筆記は変わってくる。
ここらへんは、要約筆記の指導が難しい所以でもあります。
後から筆記されたものを読み返しただけでは正しい評価が出来ないのが要約筆記。
文章がきちんと書けている部分が良い要約筆記だったとは限りませんし、逆に、不充分な文章であっても、状況に応じたベストな処理の結果かもしれない。

では何をもって要約筆記的にベストな選択と見做すのか。
私は、「無駄のない筆記」が良い要約筆記であると考えます。
これは、いわゆる“無駄な言葉を省く”という意味とは全く違います。
  時間の無駄が無い。
  労力の無駄が無い。
  思考の無駄が無い。
これらを満たしているものを「無駄の無い筆記」とみなし、ベストな要約筆記と位置づけます。
「最も効果的で効率的な筆記」と換言できるでしょうか。
内容に関する部分での処理の不出来は、時間・労力双方の無駄として勘定することになります。
そして、真に無駄無く筆記しても情報保障として充たされない部分は、現時点では、やむなしと判断します。
それは要約筆記のツールとしての限界です。
そんなのは駄目だと言うのなら、現行の要約筆記のスタイルそのものを大きく見直す必要が出てくるでしょう。
要約筆記の限界は確かにあります。
ですから、それはそれとして認識し、その不足を補うツールを発想し、トータルとして情報が保障されるシステムを構築していくという考え方が建設的ではないかと考えています。
そのためにも、要約筆記で出来ることと出来ないことの見極めは大事です。
要約筆記では対応しきれない状況なんてものは、いくらでもある。
それでも最善を尽くすのが通訳者の役割ではありますが、システムを考える上では、要約筆記で全て引き受けようとすれば、必ず穴が出来るでしょう。
諸条件の将来的な発展の余地も視野に入れた上で要約筆記の守備範囲を確かに見極めることは、目下の課題の一つと考えます。
もちろん、要約筆記に限界があるからといって要約筆記の存在価値が減ずるということは決してありません。
要約筆記は、一つのツールとして不可欠な存在であると同時に、充分に有用性・利便性の高いものだと思います。
そして、技術的に発展・応用の余地はまだまだあります。
要約筆記者の質も要約筆記の技術段階も、要約筆記の限界云々とは程遠い現状と言えましょう。
これは、手書要約筆記・PC要約筆記両方に言えることです。
要約筆記の限界にまで技術を進化させられるかどうかは、要約筆記者次第でしょうか。
言うは易し行うはナントカ。
「無駄の無い筆記」というのは実に難しいです。
特に手書要約筆記は、考えれば考えるほど難しく奥深いのですが、半面、非常に面白い世界でもあります。
言語学的な側面もさることながら、知覚心理学的要素も大いに絡んでくる。
マニアックになりすぎると不評なので詳説は避けますが。

話が逸れました。
ここからは「無駄の無い」という意味について、もう少し詳しく見ていきましょう。
そのためには、まずは要約筆記の作業のメカニズムの説明を。
要約筆記に限界が存する理由も、そこで併せて説明していきます。


Last Update 2010-06-03 (木) 11:47:36

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