盲ろう者とは目と耳両方に障害のある人のことをいいます。
富山盲ろう者友の会では、盲ろう者とその支援者の交流・支援活動を行っています。

現在の位置: ホーム > 盲ろう者と通訳技術 > column > 音声通訳5 音声表現技術と処理の技術

音声通訳5 音声表現技術と処理の技術

本文開始


音声通訳5 音声表現技術と処理の技術

前回は、発声・発音に触れました。
これをもう少し補足しようと思っていたはずなんですが、何を書こうとしていたか忘れてしまったので、とりあえず先に進んでみます。
音声表現技術と処理の技術ついて。
これらこそ、音訳を朗読・音読等と区別せしめる重要な要素と言えましょう。
「処理」「音声表現技術」というのは一応専門用語。
一般語としての意味とは少し違います。
大雑把に言うと…
「処理」とは、文字の音声化で生ずる情報の欠損を補う技術。
「音声表現技術」とは、正確に伝えるための“声の使い方”の技術。

では、もう少し詳しく。

2.処理の技術
音訳の基本は「原文に忠実」です。
読み手の解釈を交えることなく、書かれている情報を正確に完全に音声化する。
ここらへんが、読み手の情緒表現が加わる朗読との大きな違いとなります。
音訳の原則は情報保障の基本的な理念に矛盾しませんので、理解はしやすい気がします。
が、実現するのは非常に難しい。
問題の程度は原本にもよりますが、読み間違いなどといった初歩的な瑕疵は抜きにして、単純に「声を出して読む」という作業では情報保障が成り立たないケースは少なくありません。
視覚的な情報を音声化する中で、多少の情報の低減・欠損が生じるのは不可避ではありますが、本質的にやむをえない場合を除き、その欠損をできるだけ補い、原本の内容と同等の情報を提供するために、音訳者は様々な工夫を講じます。
その工夫の色々が、すなわち「処理」の技術。

処理の方法は色々あります。
その時と場合によって、最も効果的と思われる方法を選択します。
「正しい処理」は決して一つではないことが多いのですが、処理の方針・基準などについては、同一の原本に関しては統一することは必要です。
そして、処理の技術の主軸となるのが音声表現技術です。

追記。
今回は音声通訳との関連付けをしないまま書いてしまいました。
このところは前述の通り、聴覚情報に着目して話を進めていますが、音声通訳の中でも、特に視覚情報の保障において、音訳技術が物を言うような気がしています。
音声通訳の説明などではあまり書いてない気もしますが、必要に応じての資料読上等も音声通訳の仕事の範囲。
墨字資料を参照にしながらの説明で図表やグラフが出てくれば、補足は不可避。
また、講演・講習会等に多いスライド使用でも、図表や写真は頻出。
「ちょっとコレを見てください。ココからココの部分が…」みたいな発話をそのまま復唱したのでは通訳の意味をなさないのは明らかです。
これらは音声通訳の場合だけでなく、指点字通訳だろうと、掌書文字通訳だろうと、BMチャット通訳だろうと、同じこと。
図や写真を見て、簡潔に的確に説明することは、特に同時通訳の現場では難しい技術だろうと思います。
もちろん、図がなくても、いざ読もうとすると困ってしまうような文章は色々ありますね。
こういった想定を通訳者はしているかどうか。
その対応を考えているかどうか。
盲ろう通訳は守備範囲がやたら広いので、対応力をつけるといっても本当に難しいのですが、課題をより具体的に認識できるようになれば、或るいは対応の術も見えてくるかもしれません。


Last Update 2010-06-03 (木) 12:25:52

本文終了

powered by Quick Homepage Maker 4.27
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional