盲ろう者とは目と耳両方に障害のある人のことをいいます。
富山盲ろう者友の会では、盲ろう者とその支援者の交流・支援活動を行っています。

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かけはし24

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かけはし24

(2020年11月発行)

目次

会長挨拶

九曜 弘次郎(全盲難聴)

九曜会長と通訳者

まだまだコロナは収まりませんが、世間では『Go To トラベル』、『Go To イート』といった動きが広まってきています。当会も8月まで定例会をお休みしていましたが、9月には初のオンライン定例会を開催し、10月にはリアルでの定例会を開催しました。コロナ禍でも工夫しながらさまざまな活動を行おうと考えています。

(写真は定例会で通訳を受ける九曜会長。
会員全員がマスク着用で参加しました)

さて私ごとですが、前号の挨拶でオンラインでの集会に参加していることを書きましたが、ついに仕事でもテレワークを始めてしまいました。会社は東京にあります。当然、東京まで通うことはできませんから、私は富山の自宅で仕事をしています。通勤をしなくてよいので移動が不自由な盲ろう者にとって、テレワークはとてもよい働き方だと感じています。
職場は、視覚障害者向けに開発されたパソコンソフトや、周辺機器、便利グッズ等を取り扱っている会社で、私はそれらの機器の使い方や、購入相談に応じています。社長によると、会社に寄せられる問い合わせの大半が 電話によるもので、インターネットからの問い合わせはほとんどないそうです。正直いうと、私としてはメールなど文字を使って対応したいところなのですが、このような会社の状況なので、私も電話での対応をせざるを得ません。人工内耳のおかげで、なんとか電話での対応をこなしていますが、お客様の話し方や電話の状態によっては、とても聞き取りづらいことがあります。特に商品の注文を受けるときは、お名前や住所を正確に聞き取らなければならず、とても神経を使います。注文のお電話は全国各地から寄せられますので、聞いたことのない地名、変わったお名前の方もいらっしゃいます。そのため、仕事にも通訳・介助等の支援が受けられたらと感じています。

本年10月1日より、盲ろう者を含む重度障害者等の通勤や職場等における支援を行う国の新制度が開始されました。しかし、この事業は地域生活支援事業での枠組みのため、この事業を実施している自治体は少なく、実施を表明している自治体でも実際にはまだ行われていないのが現状のようです。盲ろう者が働くためにはこういった支援が不可欠ではないかと感じています。
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災害に備える

日本は自然災害の多い国ですが、とりわけ阪神淡路大震災や東日本大震災以降、各地で災害が多発している印象があります。富山も安全とは言い切れません。そこで、10月10日(土)の定例会の日に防災士の割山 拓身さんを講師に招き、防災について講演していただきました。
講演のポイントを絞って編集部でまとめたものを、以下、掲載します
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富山は安全か

防災士・割山 拓身

講師の割山さん

富山は災害の少ない安全なところだ、とよく言われますね。「立山があるから、地盤が固いから地震は大丈夫だ」「立山が屏風になるから台風の心配はいらんが」。でも、これは大きな間違いです。

富山にも断層が走っています。たとえば呉羽山断層帯でマグニチュード7.4の地震が起きた場合、被害は、全壊する建物9万棟、死者4,000人以上にも及ぶそうです。また、立山自体も「弥陀ヶ原火山」として24時間体制で観測・監視が行われています。

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ハザードマップ

防災マップの表紙

まず、やってほしいことは、ハザードマップの確認です。身の回りでどんな災害が起きうるのか、調べることができます。

ハザードマップは全部で7種類(富山県は6種類)あります。新しくなった時点で市町村が全戸に配布しますが、インターネットで見ることができます。下の表の担当部署に行けば、もらえるものもあります。

(写真は2020年6月に富山市で配布された
洪水ハザードマップの表紙)

1洪水河川の氾濫、浸水など市・河川課
2内水降雨により下水道の処理限度を越え、河川等に放流できない場合の浸水市・上下水道課
3高潮台風の接近等による浸水など富山県では作成されていません
4地震液状化現象が発生する範囲、大規模な火災が発生する範囲など県防災危機管理課
5津波浸水地域、高波時通行止め箇所など県防災危機管理課
6土砂災害土石流の発生渓流、がけ崩れの危険地など市・河川課
7火山火口が出現する地点(範囲)や、溶岩流・火砕流・火砕サージの到達範囲、火山灰の降下する範囲、泥流の到達範囲など県防災危機管理課

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警戒レベル

次に「警戒レベル」に注意してください。気象庁等の情報や市町村の対応はいろいろな段階に応じて出てきますが、「警戒レベル」で分けると、住民が取るべき行動との関連がわかりやすくなります。
注目していただきたいのは、警戒レベル3が出たときです。私を含めて障害のある人、高齢者は避難に時間がかかります。そういう人はレベル3の段階で避難を終わってください、ということです。

警戒レベル象庁等の情報(以下は例)市町村の対応住民の対応
3大雨警報・洪水警報避難準備・高齢者等避難開始避難準備が整い次第、避難開始、高齢者・障害者は速やかに避難
4土砂災害警戒情報避難勧告・避難指示(緊急)速やかに避難、避難を完了
5大雨特別警報災害発生情報命を守るための最善の行動をとる

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自主防災組織

さて、災害が発生したとき、障害のある人や高齢の人、赤ちゃん、外国人の命をどう守るか、ということですが、鍵は「自主防災組織」です。被害が多発すれば、自分の所に警察や消防が駆けつけてくれるとは限りません。頼りになるのは、普段から顔を合わせている地域や近隣の人々です。自治会をベースにしたり新たな組織を作って、災害時に助けが必要な人々をどう支援するか、ふだんから考えていく必要があるのです。
自治会長や民生委員と会ったときには、ぜひ、災害時には何をどうすることになっているの?と聞いてください。そこで「やらなきゃならん」という気持ちになってくれれば、一歩前進です。
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知っておくこと・準備しておくこと

避難するとき、知っておいたほうが良いことをいくつか申し上げます.

避難場所と避難所は違います。

・避難場所・・・延焼火災やその他の危険から避難者の生命を保護するための施設・場所。津波タワーなど。
・避難所・・・被災者を一時的に受け入れ、保護するための施設。寝泊りできる体育館など。

日頃から災害に備えて準備をお願いします。非常用の持ち出し物資の例をあげます。

・1週間分の食料
・家族の人数分の懐中電灯
・パンの袋。日頃からためておいてください

パンの袋というのは、ポリプロピレンでできています。臭いが外に出ません。これを捨てないでためておくと、例えば避難先で赤ちゃんの便をくるむ時などに袋を活用できます。
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自助、共助、公助

最後に、自助、共助、公助について。
災害においては「自助」、つまり、自分の命は自分で守ることが重要です。たとえば家族と、待ち合わせ場所の確認を徹底しておきましょう。

「共助」は「近助」です。自治会長や民生委員、向こう三軒両隣りと仲良くなり、情報を共有しておきましょう。「公助」は、災害のときは当てにしないでください。被害が多発すれば、自分の所に警察や消防が駆けつけてくれるとは限らないのです。
繰り返しになりますが「自分の命は自分で守る」を忘れないでください。自分から働きかけないと共助も得られません。それも含めて「自分の命を自分で守る!」の気持ちを持ち続けてほしいと思います。
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活動報告

2月の定例会(石川の友の会との交流)の後、新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、富山盲ろう者友の会では、定例会、サークルなど、会員が集まる活動を停止していました。6月の総会も、書面決議で行いました。

zoom会議の画面

感染が落ち着いてきたことから、7月から活動を再開しています。
また、感染の第三波が来て、再び集まれなくなる事態に備えて、9月にはZoomを使ったオンライン定例会を試みました。手話通訳や文字通訳を付けて、視覚障害のある会員や聴覚障害のある会員も参加できるようにしました。
(写真はオンライン定例会のときのパソコン画面)

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こんな本、読みました

広瀬 浩二郞『目に見えない世界を歩く~「全盲」のフィールドワーク』

(平凡社新書、2017年)

井筒屋 勝己

紹介する本の表紙

著者は、国立民族学博物館准教授の広瀬 浩二郞さん(1967年生まれ)です。全盲の広瀬さんは、かつて「触常者宣言」を書きました。視覚障害者は「触常者」であり、「触文化(さわって知る物のおもしろさ、さわらなければわからない事実)の魅力を熟知するのも触常者なのである」(本書より)というのです。実際に広瀬さんは、民博で「さわる文字、さわる世界」展を開いたほか、 兵庫県立美術館の「つなぐ×つつむ×つかむ~無視覚流鑑賞の極意」をプロデュースするなど、多彩な活動を続けています。
確かに私には、「縄文土器と弥生土器の手触りはどう違うの?」(本書より)なんて発想はありませんでした。「見常者」(広瀬さんの造語)は視覚情報にとらわれて、味わえていないものがある、ということなのでしょう。視覚障害に関して新鮮な視点を提供してくれる本だと思います。

編集部より会員のみなさまへ: 盲ろう、ろう、難聴、視覚障害などに関する本で紹介したいものがありましたら、編集部までご一報ください。
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