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Ⅱ-(ⅳ)筆記技術の考え方

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Ⅱ-(ⅳ)筆記技術の考え方

低減のメリット・低減のデメリット

無駄のない筆記のためには、どのような技術が必要か。また、どのような考え方をすればいいか。
まず触れておきたいのは、“低減“についての捉え方である。要約筆記において、情報量の低減は免れない。内容の省略はもちろんのこと、言葉の置換・集約もすべて、元の発話の情報量を低減する作業である。そうして何かの要素を削った場合、若干の例外はあるものの、そこには何らかの不利益が生ずる。当然、その程度には較差があるが、幾分の不利益を生じさせていることに間違いはない。ここで大切になるのが、低減にあたっての処理基準である。
リアルタイムの筆記では、書ける量に一定の限界がある。その有限の筆記量を如何に有益に活用するかが、要約筆記作業の真髄と言ってもいい。そうした場合、何かを選択することは、別の何かを選択しないことを意味する。逆に、何かを省くことで、その分、他の何かを採用できることになる。ここに、ある種のバランス感覚が求められる。低減の作業は、そのデメリットを上回るメリットを生むためになされなければならない。低減するデメリットと、それで得られるメリット。それらを総合的に考える感覚が必要となるのである。
 “低減”という言葉を、やや当然に使ってきた。感覚的に合わない部分もあるが、ここでは、原話から、何がしかの要素を削る処理は全て、“低減”であると解釈している。省略、集約、置換、といった作業全般に加えて、略号・略語の使用、漢字の仮名書等も、“低減”に含まれることになる。もう少し語弊のない表現を提示したいところではあるが、ここは概念の説明として理解していただきたい。

バランス感覚と優先順位

メリット・デメリットのバランス感覚が大事だと述べたが、その判断は簡単ではない。要約筆記の価値基準は概して主観的であり、定量化しにくい。したがって比較に際しても、主観と主観との比較となり、結論を出しにくいのである。ここに、判断のための考え方、その評価について改めて考えてみる。
まず、要素について、「それが必要か、必要でないか」という視点で考えてはいけない。“必要ない”と言いきれるケースは少ない。また、”必要だ“と思うからと言って、全部書けるというものでもない。要約筆記においては、言葉の要素自体の必要性について問うのではなく、「それを書くことで、もっと必要な要素を落とすことになっていないか」という目で見ることが大切である。絶対ではなく相対。そして優先順位を適切につける判断力。それが求められる。
そしてもうひとつ大事なことは、判断のための比較ベースに“時間”があるということである。どちらの表現が良いか、どの筆記がわかりやすいか等を評価するためには、同じ時間枠の中で検討しなければ意味がない。その際の時間枠の取り方は、長すぎても短すぎても良くない。どの区切りで検討するのが相応かは、その状況によるが、時間にして概ね5秒から30秒。少なくとも句の単位以上で、多くとも2/3ステージ程度内の分量での検討が妥当だろう。

要約筆記の技術

ここからは、実際の筆記技術について考えを進めていく。
ここで要約筆記における筆記の技術を、「表記技術」「変換技術」「要約技術」という3つに大別する。「表記技術」とは筆記時間を減らす技術、「変換技術」とは、言葉を置換する技術、「要約技術」とは、話の内容を整理し概括する技術と整理される。
以下に、要約筆記技術の分類モデルを示す。

画像の説明

以下に順次解説する。


Last Update 2011-05-08 (日) 01:40:32

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