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Ⅲ-(ⅰ)要約筆記の技術と思考

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Ⅲ-(ⅰ)要約筆記の技術と思考

要約筆記の思考とは

 ここまで要約筆記技術について述べてきた。実際に要約筆記をする上で、各種の要約筆記技術は同時並行的に用いられる。各技術は要約筆記の作業の上で必要なものであるが、その技術のすべてを常に使うというわけではない。どんな技術を使ってどのような処理するかということは、その時どきの状況によって判断されることになる。発話の内容によって処理の傾向はだいたい決まってくるものの、同一の発話内容であっても、そのときの状況によって具体的な処理は異なる。全く同じ文言を全く同じように話したとしても、前後の発話内容等の条件によって、構築される要約筆記文は違ってくるのである。要約筆記の評価が難しい理由もこの特徴によるところが大きい。
 要約筆記の思考は様々な要素を含んでおり、その一般化は難しい。各々の筆記者によっても思考のパターンはいろいろであり、現段階ではそれぞれを否定することはできない。しかしながら筆記の結果のみを見ていても、その思考の中に含まれる無駄や不適切な処理に気づくのは難しい。要約筆記の評価をし、その改善を考える上で、要約筆記作業の思考の各段階を解剖し、分析を試みることは不可避であろう。
 ここで、要約筆記技術についての考え方をふまえた上で、いくつかの思考モデルを用いて、要約筆記における思考機序について考察していく。

要約筆記技術の理念

 先に要約筆記技術を、表記技術、変換技術、要約技術の3つに分類した。この分類において、技術使用の優先順位をつけるならば、表記技術、変換技術、要約技術の順に優先となる。最も優先下位となるのは要約技術。表記の工夫と変換作業によって事が処理できる場合は、敢えて省略や概括を加える必要はないということである。実際問題としては、省略等の処理を加えずに筆記できるケースは皆無と言ってよく、要約技術は要約筆記において不可欠なものである。しかしだからといって、それを使うことを当然と認識するのは誤りである。表記技術で処理できるものは処理し、処理しきれないものは変換技術で処理し、それでも処理しきれないものは要約技術で処理するという考え方が、要約筆記の作業理念としては妥当であろう。

思考の段取り

 要約筆記技術の優先について述べた。要約筆記の評価に際しては、この考え方を基準にして構わない。しかし矛盾するようだが、実際の要約筆記作業の思考の上では、優先の考え方は全く違ってくる。思考の段取り上での優先順位はむしろ逆。省略・概括などの大きな処理を優先的に進め、表記の工夫などの処理は字を書く瞬間まで思考に乗せない。また、要約技術と変換技術の多くは、実際は区別することなく同時に行われる。
 では実際の思考の機序はどうなっているか。次項にて、もう少し詳細に見ていくことにする。


Last Update 2011-05-07 (土) 14:41:21

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